web animation magazine WEBアニメスタイル

 
COLUMN
リスト制作委員会通信[リスト制作委員会]

第7回 『アッコちゃん』第2期と羽山淳一

 『ひみつのアッコちゃん』DVD−BOXの作業が、ようやく峠を越した。あとは全8ボックス購入者に向けた特典ディスクの企画・構成を残すのみ。
 『アッコちゃん』は、個人的にもかなり思い入れのある作品だった。第1期が本放映されていたときは自分はまだ小学1年生。異性を意識するほどの年齢ではなかったにもかかわらず、主人公のアッコちゃんには、サリーやサファイヤやあかねちゃんとは違う“女の子”を感じたものだ。お嬢様風で清潔感があって、しなやかそうな肢体をしていて、勝ち気だけどセンチメンタルなところもあって……。当時、怪獣に夢中になっていた7歳の男の子にとっては、その「扱いにくそうな感覚」も含め、アッコちゃんはリアルだった。同じクラスにいてもおかしくないような実在感があった。もしかしたら、2次元キャラとしては初恋の相手だったと言えるかも知れない。今にして思えば、その魅力は高橋信也のデザインに負うところ大だったのだ、とわかる。
 だからこそ、時は下り、1988年に登場した第2期では、兼森義則のデザインによるアッコちゃんが、やけにサバサバして色気がないのに抵抗を覚えた。まあ、すでに自分は26歳。本来の視聴ターゲットでもない人間が勝手な戯言を言っても仕方ないのだが。で、私としてはアッコちゃんに“女の子らしさ”を求めるのはあきらめ、ひたすらナンセンス・ストーリーと、作画の暴走を楽しむことにした。何たって、第2期の脚本には浦沢義雄が入っていたし、作画には『ゲゲゲの鬼太郎[第2期]』や『魁!!男塾』で油の乗り切ったバリバリのアクション派が軒並み参加していたのだから。松本朋之、羽山淳一、増田信博、須田正己など“男っぽい”アニメーターたちが互いに腕を競った第2期は、第1期とはまったく別の見どころに溢れることとなった。
 特に本作は、羽山淳一の活躍が光っている。当時、ムッシュ・オニオンプロダクションに所属していた彼は、香川久、加藤浩利、須賀重行、中島研一といった錚々たる原画マンと一緒に作画監督と原画の双方を担当。『北斗の拳』『男塾』の重厚な流れから一転、新境地ともいうべきビジュアルを見せてくれた。メリハリと飛躍とダイナミズムに満ちたギャグ表現。第8話「潜入!エリート幼稚園」、第14話「転校生はアブナイやつ」、第21話「憧れのスチュワーデス」、第28話「悪役女子レスラーの恋」などは、あまりのハジけた作画の美味しさに、『アッコちゃん』を観ていることを忘れてしまうほどだった。
 考えてみれば、『アッコちゃん』の原作は赤塚不二夫なのだから、このギャグ路線は正しい先祖還りでもあるのだった。少女アニメらしく優しい作風だった第1期には愛着があるものの、第2期こそが『アッコちゃん』の王道なのかも? と気づかされた。ちなみに10年後、第3期ではこの傾向にさらに拍車がかかるのだが、今度はひるむどころか、「これだよ、これこそが『アッコちゃん』だよ!」てな気分になっている私がいたのだから不思議なものだ。
 第2期BOXでは、そんなわけで「羽山淳一インタビュー」を敢行。第2期の解説書を作るなら絶対不可欠な要素、と前々から温めていた企画だった。次回作である劇場アニメの作業でお忙しいなか、快くお時間をとって下さった羽山さんからは、貴重なエピソードの数々が続出。なかでも、作品の方向性を考えているときに「頭に浮かんだのが『ど根性ガエル』だった」という証言には膝を打つ思いだった。日常を舞台にしたヒューマンコメディの共通性。限られた枚数でいかに効果的な動きを作るか、という課題。本作は1980年代の東映動画における『ど根性ガエル』的作品でもあったのだ。ほかにも、第14話におけるチカ子の走りについての試み(6枚のポーズをいかに描くか)や、第28話の初号試写の後、関弘美APから「やり過ぎ」と釘を刺された思い出など、どれもが感心したり笑ったり、妙に納得したりの話題ばかり。本インタビューは、映像観賞のガイドとしても十分に役立つ内容になったと思う。
 こうして、第2期解説書では「羽山淳一」のコーナーを作ったのだが、続く第3期解説書の特別企画はというと……そう、ご想像通りである。多くのファンの皆さんのご期待に添うべく、私自身も大ファンであるあの人へのインタビュー、しっかり用意しました。その話題は次回で。

[DVD情報]
『ひみつのアッコちゃん 第二期(1988)』 コンパクトBOX1〜2
発売元:東映アニメーション株式会社 株式会社コムストックオーガニゼーション
販売元:BIG TIME ENTERTAINMENT
価格/1:32000円、2:26000円(全て税込)
発売日/BOX1、2とも発売中
[Amazon]
 

■第8回へ続く

(05.09.07)

 
  ←BACK ↑PAGE TOP
 
   

編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
Copyright(C) 2000 STUDIO YOU. All rights reserved.