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第6回 『佐武と市 捕物控』の新事実?(後編)
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『佐武と市 捕物控』に関して、私が知ったもうひとつの新事実──それは、大阪の毎日放送(キー局)と東京のNETとでは、第1話と第2話の内容がそっくり入れ替わっていた、という「ウソのようなホントの話」である。
これまで幾多の出版物を通じ、『佐武と市』の第1話は虫プロが制作した「三匹の狂犬」、続く第2話はスタジオゼロが制作した「反逆者」であると書かれてきた。事実、NETでの放映日は「三匹の狂犬」が10月3日、「反逆者」が10月10日であり、関東地方のオン・エアに関する限り、この資料に間違いはない。ところが、関西の毎日放送では状況は正反対となる。10月3日に「反逆者」、10月10日に「三匹の狂犬」が放映されていたのだ。前述の黒川文男さんからそのことを聞かされたとき、最初は耳を疑った。だが、関西版の朝日新聞縮刷を調べてみると、確かに証言通りであった。
毎日放送とNETは、どちらも『佐武と市』を毎週木曜日の21時〜21時30分の枠で放映していた。両者は同時ネット局の関係にあり、通常ならば、ふたつの局では同日同時刻にまったく同じ内容の映像を送り出すはずなのだ。それが少なくとも第1話と第2話については、異例の措置がとられたことになる。
これは何故なのか。私はひとつの可能性として、スタジオゼロと虫プロ、ふたつの制作会社の片方だけを優位に立たせず、それぞれに華を持たせようとした結果ではないか、とも想像している。つまり、どちらの作品も第1話として放映するという意味で。真相を知っているのはおそらく大阪電通なのだろう。現時点では担当者に取材しているわけではないので、確かなところは判らないが……。
ただ、データマニア的には、今回の新事実は別の側面のほうが重要だ。キー局が毎日放送だと判明したことから生ずる、『佐武と市』の放映リストへの影響である。従来は、第1話を「三匹の狂犬」、第2話を「反逆者」と記載してきたわけだが、これはあくまでもNETにおけるデータに過ぎない。今後は、毎日放送で放映された順番のほうを正規のものとして位置づけるべきではないか。すなわち、第1話は「反逆者」、第2話は「三匹の狂犬」というように。
なお、ディープなファンのために補足説明を。1995年に『佐武と市』のLD-BOXが発売された際、実はA面の1本目に「反逆者」、2本目に「三匹の狂犬」が収録されていたことをご存知だろうか。これを見て「何だ、10年も前から、正しい放映順は判っていたんじゃないか」と指摘される方がいるかも知れないが、それはどうも違うようだ。以前、虫プロ関係者から伺ったお話では、LD発売時、石森プロから虫プロへと連絡があり、放映第2話である「反逆者」を、LDでは特別に第1話として収録することを了承してほしいと要請があったそうなのだ。その理由としては、『佐武と市』は本来、スタジオゼロの企画として出発した作品であり、制作順も虫プロの「三匹の狂犬」よりゼロの「反逆者」のほうが早かった。だから、LDソフトではそのゼロの立場を尊重したい、というものだったという。スタジオゼロと昔馴染みである石森プロならではの、友情的な配慮と考えるべきだろうか。実際、LD版解説書内の「作品リスト」のページを見ると、「編集の都合上、放映日が後になる「反逆者」をあえて第1話として収録しております」という但し書きをつけた上で、「三匹の狂犬」の放映日を「S43.10.3」、「反逆者」の放映日を「S43.10.10」と記載している。「編集の都合上」という言い回しが何とも不分明だが、それが上記のような裏事情だったとすると、このLDは“偶然にも”正しい放映順でエピソードを収録していたことになるのだ。
一方、今回のDVD-BOXでは、私はLD版の収録順を改め、正しい順番にエピソードを収録し直そうと考えるあまり、かえって間違いを犯してしまった。ディスクの収録順を決める時点では、まだ毎日放送がキー局であることも、第1話の内容が関東と関西とでくい違っていることも知らなかったからである。そんなわけで、本BOXは、第1話が「三匹の狂犬」、第2話が「反逆者」になってます。ごめんなさい。
取材や調査は、どんなときにも“やり過ぎる”なんてことはないんだなあ、と今さらながらに実感。取材しただけ、調査しただけ、新たな発見があるものだ。
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▲左はDVDのジャケット。右は封入特典の原作マンガだ。 |
●商品データ
DVDBOX「佐武と市捕物控」(10枚組)
価格:44415円(税込)
発売日:2005年7月27日
封入特典:別冊解説書、原作マンガ
発売元:青林堂ビジュアル
販売元:
コロムビアミュージックエンタテインメント
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