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第5回 「ひみつの夢のシルバーランド」(リボンの騎士 Complete BOX)
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水玉螢之丞(イラストレーター)
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イラスト/水玉螢之丞
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アニメ版の原作にあたる「なかよし」版の連載と、TVアニメの両方をリアルタイムで知っていながら、すっかりいわゆる「オレ女」系に育ってしまったオレですが、サファイアの帽子(と亜麻色の髪の乙女の髪とドレスにも)に付いてるでっかいリボンには、コドモ女子心が惹きつけられましたな。あのゴージャスなボリューム感! 中にぜったいワタ入ってるよねアレ。当時のオレの「3大うっとり二次元アイテム」のひとつです。残りふたつは、高橋真琴せんせいの描く小花やバラの可憐さ&わたなべまさこせんせいの描くレースのハンカチの繊細さ。どんなにまねしても描けなかったもんですヨ。ていうか今でも描けないですヨ。
「タカラヅカ的なものを描きたかった」と手塚先生自身がコメントしておられるとおり、原作版には過剰なほどのファンシー記号がちりばめられておりました。オトコのヒトがそういうモノを描くと、時としてビミョーにすべったりものすごくすべったりしがちなのに、『リボンの騎士』にはそれがなかった。どこまでもロマンチックで、なにもかもがふんわりと微熱を帯びてなまめかしくて。お妃さまが幽閉された塔の、敷石の床さえもが、体温を持っているかのようでした。香りでいえばフローラルにムスクが混じってるっていうか、記号としてはかわいいんだけど、与える印象はとてもセクシーで。あのリボン、ひらひらしてなくてむしろ肉厚と表現したくなるあのリボンは、じつは女の子であるサファイア王子が、隠しきれずに発散してるフェロモンの象徴だったのかも。とか思ったり。
そういう、むせかえるようなロマンチシズムの香りが、アニメ版ではかなり薄まっちゃってるんだけど、アニメ版ならではの愉しみももちろんあるからだいじょうぶ。いちばんのポイントは、やはりフランツ王子でしょう。原作版では汎用ハンサム(死語だけどぴったり)系のルックスで、亜麻色の髪の乙女にぽーっとなっちゃう一方で、サファイア王子は単なる親友扱い、いいかげん気づけよアンタ! っていうアタマ悪い感じだったフランツを、アニメ版では手塚式“スター・システム”キャラクターの中でも、性格俳優として筆頭に挙げられるロック・ホームが演じているのでございますよ。ロックスキーは必見ですヨ。
原作より見かけの年齢を大幅に下げながら、性格は原作版よりちょっぴり邪悪&かなり複雑。第4話で登場したかと思えば、いきなりナイロン卿からサファイアが男か女か探りを入れてみてくれとか頼まれて、「へえ、こいつはおもしろいことになってきたぞ」とか言ってOKしちゃう。んでサファイアが女だと知っての感想はといえば、「ほんとは女の子なのに、男のふりなんかしてて、けなげでかわいい子だなあ」。屈折してますヨ。ちゃんとロック味のキャラになってます。少しマユゲ描いてるのもポイント高いし(笑)。『リボンの騎士』の翌年に放映開始された、実写とアニメの合成だった『バンパイヤ』(原作はロック・ホームの代表作、と申せましょう)が純粋なセルアニメとして制作されてたら、当時のロックスキーさんたちは二度おいしい目に会えたはず、とか考えるとなんだかすごく(勝手に)残念。
今回あらためて見直して驚いたことに、放映当時は歌あり踊りありのミュージカルっぽい作品だったように記憶してたらそんなことなかった、てのがあります。ていうかオレの単なる思い違いだったんだけど。冨田勲によるオープニング主題歌のメロディの力が、あまりに強烈だったってことですね。あるときは弦で、あるときは管で、アレンジを変えてくりかえし登場するフレーズが、シルバーランド(inオレの脳内)の「おとぎの国っぽさ」を幾重にも塗り重ねて、画面の印象を補強しちゃってたみたいです。お城の従業員(違)たちが忙しく働いてます、みたいなシーンに、バズビー・バークレー風の演出は見られるものの、モブによる大合唱とかはなくて、でもほんとはそういうシーンあったよネ? っていう気持ちが捨てきれなかったり。ないってば。
つまりは原作版(なかよし版)を読んでるロックスキーに、強力におすすめしたい作品です。ぜひ。ってピンポイントすぎ?
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●商品情報
「リボンの騎士 Complete BOX」
価格:19950円(税込)
仕様:カラー/10枚組(全52話収録)
発売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
好評発売中
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