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第17回
東映アニメモノクロ傑作選『ハッスルパンチ』
湯浅政明(監督・アニメーター) 







 イラスト/湯浅政明
 そりゃ見たいでしょ。
 長編の合間に作った、バイト気分の適当リミテッド作品なんて話も聞いてたけど、東映初期のスターアニメーター達が大挙参加してて、森やすじのかわいいキャラで、スラップスティックのギャグコメディ。
 『ハッスルパンチ』は老舗の東映さんの、初期モノクロTVアニメシリーズです。
 子供の頃見てなかったのは、地元がネットしてなかったのか興味がなかったのか?
 まあこの際そんなんはどうでもよくて、とにかく見てみたかった。
 今回、全26話のうちDVD化されてる4本を見る事ができました。

 町の風景が雰囲気が、あっけらかんとした品のよいシンプル&のどかな感じで、これはノスタルジーなのか何なのか、かつてあった子供の頃のユートピア見てる感じさえしてくる。
 まずキャラクターがよくて、可愛いのにデザインは尖ってる。
 一見フラットに描いているが、フィギュアにするとよさそな立体感も考えられ、ちょうど東映でやってたクレイモデルの展示を見にいったら虜になった(ホッパもよいんだよね)。
 動きもよくて、シンプルなフォルムでゆがみながら気持ちよく動く。
 勢いに任せたよなフォルムで、今のリミテッドとはちょっと違う全身で動く感じ。

 特に、かわいいとか動きがよいとかにも通じるんだけど、線がのびのびしててキレイなんだよね。
 今みたいに鉛筆でひかれてなくて、1枚1枚動画の上に透明のセルを置き、ペンで映しとっている。
 その線がとにかくいいんだよな。
 そんな事ないんだろうけど、多少下の絵とズレても線の勢いを優先させたんじゃないかと思うくらいの感じ。
 それがシンプルなキャラに拍車をかけ、滑らかなボディラインにうっとり。動きにも影響を与える。
 込み入った作画には適さないかもしれない失われた技術だけど、それが贅沢な芸術だったなと認識しました。
 金が使える作品作るなら、まずハンドトレスでやってみたい。

 前後しちゃったけど、内容はというと、設定もおおらか。
 悪玉のガリガリ博士は代々日陰になる家系に生まれ、町を自分のものにして思いっきりのびのびと太陽を浴びたいと考えている。
 主人公のパンチたちもスクラップ置き場の廃車に住んでいて、何で生計を立ててるのか、大人なのか子供なのかもハッキリしない。
 ピストルだギャングだ拉致監禁だと出てきても、いい時代の悪意のない感じで、TV見てるとアナウンサーが直接話しかけてきたり、ギャグもどこかとぼけた感じです。
 ふざけてどこかのどかな内容が絵と同様のびのびと展開されており、楽しい気持ちにさせてくれる。
 付いている予告編も期待を持たせるのが多くて、他のも見たいと思わせる。見せてほしい。見せてください。

●商品情報
「ハッスルパンチ」
価格:3990円(税込)
仕様:VWDS9114/モノクロ/片面2層/約101分収録/ドルビーデジタル(日本語モノラル)/TVサイズ
収録作品:「あいつを追い出せ」(第1話)、「謎の怪盗を追え」(第5話)、「ぺッタンコ騒動」(第12話)、「ハイウェイをすっとぱせ」(第14話)
映像特典:小田部羊一(作画監督)、奥山玲子(作画監督)インタビュー
発売元:東映アニメーション・ブエナビスタホームエンターテイメント
好評発売中
[Amazon]

 


(07.06.04)

 
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