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第14回
東映アニメモノクロ傑作選『レインボー戦隊ロビン』

五味洋子(アニメーション研究家) 

 『レインボー戦隊ロビン』は1966年から翌3月に渡って放映された。製作の東映動画(現・東映アニメーション)にとっては5本目のTVアニメであり、「戦隊」とタイトルにもあるごとく、本作によってTVアニメにおけるグループヒーローものの新ジャンルが確立したと言える。
 全48話のストーリーは、正義に燃える少年ロビンを隊長に総勢7人のレインボー戦隊が地球を狙うパルタ星人と戦う通称「パルタ星編」と、ロビン以外はロボットである各隊員の豊かな個性を生かした通称「バラエティ編」の2部構成になっており、シリアスからギャグまで全方位的な魅力にあふれている。タイトルのレインボーとは7人の隊員を指しているが、作品の多彩な魅力をも表現しているのではと思われる程だ。また主人公ロビンの、パルタ星人の父親と地球の女性の間に生まれたという設定が絶妙に生かされた大河ドラマ的構成も注目される。
今回のDVDには4本のエピソードが収録されているが、第1話と、パルタ星編の最終話である第26話は当然の選択として、残る第6話、第28話は本作のヒロイン、リリを中心にしたエピソードであり、しかも前者はメロドラマ、後者はドタバタ・コメディと、その両極端な魅力が発揮された傑作なのだからたまらない。当時の男女双方にとって憧れの存在であるリリの魅力は40年(!)の時を経てなお色褪せないのだ。

 という訳で、以下、個々のエピソードについてのレビューに移ろう。
 第1話『怪星人現る!』はシリーズの導入部としてテンポ良く必要にして充分。脚本に飯島敬(ペンネームは小島和彦)、演出は芹川有吾、作画監督に木村圭市郎と、黄金の布陣だ。
 当時の東映動画は脚本を社内の人材が手掛けることが多かったが、『ロビン』ではプロデューサーの飯島敬と演出の芹川有吾の2人でシリーズの大半の脚本を手掛けており、この2人の敷いた基本ラインによって『ロビン』はアクションの中にもロマンと笑い、そして社会的主張を持った作品に仕上がったと言っても過言ではない。また、豪快なアクションを得意とする木村圭市郎による、光線銃のビームが迸るような作画も異彩を放った。原画陣に後の作画監督クラスが結集しているのも見逃せない。

 第6話『宇宙にかける虹』は、脚本、演出共に芹川有吾(脚本は浜田稔の名を使用)。名曲「禁じられた遊び」をBGMに宇宙版「ロミオとジュリエット」とも言うべき悲恋が展開する芹川ワールドの独壇場。この、敵味方に分かれた男女のメロドラマこそ芹川節と呼ばれる芹川ならではの演出の一つの代表であって、劇場版『サイボーグ009』のヘレナ以下、枚挙に暇が無い程にそのフィルモグラフィを彩っている。
 また「パルタ星編」を通して流れるロビンの母恋いの情は、芹川の代表作『わんぱく王子の大蛇退治』にも共通するが、これについて芹川はヘッセ文学の「永遠に母なるものへの愛」の影響を自ら語っている。この母子の情愛が『ロビン』にロマンチックな一面を与えているのだ。

 第26話『パルタ星最后の日』ではパルタ星壊滅の運命を前に、既登場のキャラクターたちが集結するという王道中の王道、カタルシスあふれるドラマが展開する。ロビンの戦いがパルタ星の人々を救うものとして終結するのも素晴らしい。作画監督は美しい絵で女性ファンに人気の窪詔之。
 また、パルタ星の宇宙ミサイルの脅威には、米ソ冷戦時代の大陸間ミサイル攻撃への不安と恐怖が反映されているに違いなく、他のエピソードと共に当時の社会情勢を映すものとなっているのも見落とせない。

 第28話『リリにおまかせ』はリリの愛すべきジャジャ馬ぶりが遺憾なく発揮された痛快作。リリ主演の話は他に第17話『パリファッション作戦』、第33話『てんやわんや作戦』があるが、どれもドタバタ・コメディの傑作だ。演出はいずれも田宮武。女の子は添え物だった時代に堂々と主役を張ったリリは当時の女子に人気を博すと共に、実はリリが初恋の人という男子も多いのだ。第17話と第28話の脚本は共に芹川有吾であり、後に『マジンガーZ』の弓さやか等にも繋がって行く氏一流のジャジャ馬愛が横溢している。気丈なように見えて1本抜けているリリを皆が影でサポートするギャグも楽しく、米ドラマ『ハニーにおまかせ』風の黒ずくめのスタイルといい、ディレクターの声に促されて渋々のクロージングから、前川陽子が歌うエンディング「すてきなリリ」に至るまで、最高にオシャレな1本。

 映像特典は作画監督の木村圭市郎氏インタビュー。「今見ると恥ずかしい」と言いながら、東映調の殻を破らんとした往時の意気込み、レーザー光線の作画や躍動感ある線の秘密、今、アニメ作家として目指す新作の話までを熱く語ってくれる。独自のファッションと併せ、その比類なき豪傑ぶりは必見。
 『レインボー戦隊ロビン』は前述のリリ主役の話をはじめ、文字通り命を削って核兵器の使用禁止を訴える第11話『マンモス空母の危機』、戦いの空しさと66年当時にクローン人間の苦悩を描いた第16話『撃墜王パルタの鷹』、若き日の宮崎駿も参加の第38話『ハッスル・ベンケイ』と傑作揃い。全話DVD化が切に待たれる。

●商品情報
「レインボー戦隊ロビン」
価格:3990円(税込)
仕様:VWDS9116/モノクロ/片面2層/約110分収録/ドルビーデジタル(日本語モノラル)/TVサイズ
収録作品:「怪星人現る!」(第1話)、「宇宙にかける虹」(第6話)、「パルタ星最后の日」(第26話)、「リリにおまかせ」(第28話)
映像特典:木村圭市郎(作画)インタビュー
発売元:東映アニメーション・ブエナビスタホームエンターテイメント
好評発売中
[Amazon]

 


(06.08.24)

 
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