【artwork】『マイマイ新子と千年の魔法』
第13回 美術(3)

 資料収集から美術が組み立てられていく過程を、もう一つ紹介する。昭和30年代の航空写真から、新子の家(つまり、原作者・高樹のぶ子の実家)を特定していったという。劇中、貴伊子はカネボウの紡績工場の社宅の一角に住んでいるが、当時の写真から、社宅の立ち並ぶところを再現している。

●昭和31年防府市航空写真
映画の舞台となる空間の全体像を把握するために入手した最良の航空写真。写真左半分が市街地。右側上半分に広大な麦畑が広がっており、新子の家はここにある。右側下半分には埋立地の工場があり、整然と並んだ社宅がある。その一軒が貴伊子の家だ。


●年度不明 カネボウ防府工場航空写真
もう少し新しいものでよければカラー写真もある。並ぶ赤屋根が工場の社宅。手前の方の平屋の社宅が一般社員用。奥の列の二階建てが幹部住宅。建物の屋根が赤く、壁がかつては白かったらしいとわかり、「貴伊子の社宅」を不思議な空間として作りあげる、良いイメージが得られた。


●幹部住宅 戦時中の防空演習の写真
この社宅が昭和10年代前半に建てられたものであることは、『カネボウ防府工場五十年史』から読み取れる。これは、戦時中に移された防空演習の写真。


●社宅写真「い」「は」「に」「ほ」
これも同時期と思われる。左側二階建てが幹部住宅「い」。中央が二階建て社宅「は」「に」、右隅に平屋の「ほ」列が見える。


●社宅写真「は」「に」
上と同じ「は」「に」列各1番地のもう少し新しい写真。


●Cut#217背景
壁面の「火の用心」の文字が面白かったので、カットに取り入れてみる。一般社員住宅の壁の白ペンキは、海からの風雨でほとんど剥がれ落ちている。


【artwork】『マイマイ新子と千年の魔法』第14回へつづく

●『マイマイ新子と千年の魔法』公式サイト
http://www.mai-mai.jp

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