もっとアニメを観よう2011
第4回
- 『あしたのジョー2』(TV・全47話)
- 『ベルサイユのばら』(TV・19話〜40話)
- 『宝島』(TV・全26話)
- 『ガンバの冒険』(TV・全26話)
- 『エースをねらえ!』(劇場)
- 『エースをねらえ!2』(OVA・全13話)
- 『ゴルゴ13』(劇場)
- 『スペースコブラ』(TV・う〜ん……あえて1話〜13話)
- 『おにいさまへ…』(TV・全39話)
- 『華星夜曲』(OVA・全4話)
- 『B.B』(OVA・全3話[未完])
- 『AIR』(劇場)
- 『ルパン三世 ヘミングウェイ・ペーパーの謎』(TVスペシャル)
- 『BLACK JACK』(劇場)
- 『ブラック.ジャック』(OVA・全10話)
- 『宝島メモリアル「夕凪と呼ばれた男」』(オリジナル映像特典)
- 『立体アニメーション 家なき子』(TV・全51話)
- 『あしたのジョー』(TV・全79話)
- 『コブラ』(劇場)
- 『1ポンドの福音』(OVA・さきまくら名義)
観た人の人生を確実に豊かなものにする出崎統監督作品20本選んでみました。まず考えていただきたいのは“20本!”と一口に言って監督作品が20本ある人って何人いるか? よしんば20本まではいたとして「20本を選び出す」事ができるほど多作なアニメ監督って? ──まさに、出崎統様こそがそれです!!
(1)〜(5)は順不同。’75〜’80年の出崎アニメはすべて最高です! ハズレはないでしょう。
(1)は出崎&杉野(昭夫さん)と小林プロ(美術)・高橋プロ(撮影)チームの頂点かと……。こんなのが毎週テレビで放映されてた事自体が信じられないし、学生の頃全10巻の廉価版ビデオセットを(昼飯ガマンして)買って友人たちに貸しまくって布教活動(?)したところ、寝不足の輩が続出。みんな「観だしたら止まらなかった」との事。その気持ちが正解!
(2)は19話以降〜ラストまでが出崎監督。これぞドラマです。四の五の言わず観ましょう!
(3)は後半俄然面白くなり、ラストのシルバーはメチャクチャカッコイイです!
(4)俺が唯一好きな動物(擬人化)モノ。子供の頃、再放送で観てノロイが本当に怖かったのを憶えています。
(5)(6)は続けて観ると感動が倍増かと……。出崎アニメの登場人物は本当に呼吸してますね! 宗方の死は何回観ても泣けます。
(7)……実はかなり好き。脚本家・長坂秀佳先生の永遠のテーマ──父と子のドラマに、出崎監督お得意の女の情念ドラマが見事にマッチした傑作! CGパートは○作……。94分? 信じられない!
(8)実質前半ですよね、出崎監督作品は(『ゴルゴ13』とスケジュール丸かぶり)。#1・3・4・11・12が出崎コンテ(さきまくら名義)で、特に#1は「TVアニメの第1話はこうあるべき」を越えて、もはや劇場レベル。手塚治虫先生による原作版「ブラック・ジャック」の1本分に匹敵するほどの構成力です。劇場100分にも伸ばせるくらいの情報量が決して説明不足にならず、かつ速過ぎもせず、まるで21〜2分の詩のよう! #1だけでも観ましょう。
(9)は作画アニメとして観るならば、やはり#27「マリ子刃傷事件」で、泣けるドラマなら#28・32・36。原作のラストではたしか薫の君、死ぬんですよね。アニメでは死なずに辺見(武彦)と幸せになって子供まで生まれてます。出崎さんはやたらと登場人物を死なさないのです!
(10)(11)をここに書き出すのはほとんどイヤがらせかも……。何せ両方ともDVDになってません(LD止まり)。でも『華星夜曲』こそ出崎&杉野アニメでいちばんクオリティの高い作品である事は間違いない(もちろんドラマ的にも素晴らしい)し、『B.B』も未完なのは残念ですが王道のスポ根ものとして充分楽しめます。なんとかして観てほしい……。
(12)泣けます!
(13)数ある出崎版ルパンスペシャルの中でこれがいちばん出崎さんっぽい。斬鉄剣で本当に斬れないものは「仲間」ってトコがよいです。
(14)、(15)はまさに出崎解釈版『B.J』。手塚先生自身、連載当初「劇画調タッチ」を意識して始めたという事を考えると、杉野さんの絵は正解かと思います。神のメスさばき──天才外科医B.Jも出崎さんの手にかかれば一所懸命苦悩する天才に……。その分ドラマは原作とは違う膨らみを見せます。
(16)は賛否あると思いますが自分はマジ震えました! 老いたシルバーが仕留めた鯨の上で拳を振り上げ、バックでかかる町田よしとの歌(「航海日誌」)。もう、このカッコよさに痺れなきゃ男じゃあないでしょ!
(17)「ビタリスみたいな男になりたい!」と本気で思います。
(18)出崎監督の始まり。「伝説の始まりはここからだ!」的迫力に満ちた#1は必見。#4に代表される荒木伸吾作監回の荒々しいタッチも印象的。
(19)これも出崎解釈版『コブラ』です。止め絵でなく枚数を使ったアクションが気持ちいいエンタテインメント大作。好きなシーンはシド刑務所の上でコブラの前に立ちはだかるクリスタル・ボーイ。劇場(ビデオ版発売時のリバイバル上映、1992年)で観て、背筋がビリビリきました!
(20)高橋留美子先生原作も出崎監督の手にかかれば、ホラこのとおり3回PANで止めハーモニー。こーゆー原作どおりの料理も本当に巧いです。
──以上駆け足ですが、早い話
出崎統監督作品を観ない人は人生かなり損する!
って事でした。
●PROFILE
板垣伸 アニメーター、アニメ監督。代表作に『BLACK CAT』『Devil May Cry』など。WEBアニメスタイルにて「板垣伸のいきあたりバッタリ!」連載中。そして2011年放映予定の新作も準備中。
(10.12.06)