もっとアニメを観よう2011

第23回 金春智子が選んだ
「20世紀に観て、心がときめいた10本」

 順不同です。

●『長靴をはいた猫』(1969年)

 東映動画の由緒正しき「長編漫画映画」です。矢吹公郎監督作品。森康二さんのローザ姫の愛らしいこと! 今観ると、「あっ、あの作品の原型がここに!」みたいな発見もありそう。東映の長編では、『わんぱく王子の大蛇退治』(芹川有吾監督)と『太陽の王子ホルスの大冒険』(高畑勲監督)もお勧め。

●『銀河鉄道999[劇場]』(1979年)
●『エースをねらえ![劇場]』(1979年)
●『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)

 コメント不要の3作品! りんたろう監督、出崎統監督、宮崎駿監督。国産TVアニメの黎明期前後にお仕事を始められ、今なお現役で作り続けていらっしゃる3人の監督による傑作タイトル3本が、同じ年に公開されたという奇跡! まさに奇跡!!

●『じゃりン子チエ[劇場]』(1981年)

 関西では何度も何度もTV放送されましたが、それ以外の地方の人は意外に観ていないじゃないでしょうか。もったいない! 高畑勲監督作品。この映画のチエちゃんは、とっても美人さん♪

●『AKIRA』(1988年)

 荒廃した未来を描いたアニメを何本か観た中で、いちばん素直にわくわくできた作品です。大友克洋氏の原作、監督作品。

●『道成寺』(1976年)

 川本喜八郎監督の人形アニメ。表情の変わらない人形を使い、セリフもありません。なのに、ここまで人間の情念や業が描けるなんて! と、ドキドキしました。

●『サイボーグ009[TV第1作]』16話「太平洋の亡霊」(1968年)

 私の脚本の先生である辻真先先生の、入魂の一作! すごすぎます! 演出は『わんぱく王子の大蛇退治』の監督、芹川有吾氏。「芹川節」と呼ばれた濃い演出が、たくさんのアニメファンを魅了しました。絶対にもっと評価されるべき方です。
 お2人のコンビ作品として、『魔法使いサリー[第1作]』60話「ポニーの花園」、『魔法のマコちゃん』42話「たったひとつの記録」、『魔女ッ子メグちゃん』19話「さようなら幽霊さん」などもお勧めします。

●『ガンバの冒険』(1975年)
●『宝島』(1978-1979年)

 TVのシリーズものとしては、この2作品を。言わずと知れた出崎統監督の力作です。とにかく観てほしい! 感じてほしい! 胸を熱くしてほしい!


【番外編】

 せっかくの機会なので、自分が参加した作品の中から観ていただきたい作品を3本。どれも、世界に入り込みすぎてしまい、ちょっと頭の中が危なくなった(笑)思い出の作品です。

●『おにいさまへ…』(1991-1992年)

 出崎統監督と、初めて一緒にお仕事ができた作品。普及途上のBSでの放送だったために、知る人ぞ知る的な位置づけになっているのが悔しいです。NHKの人、深夜に再放送していただけませんか?

●『それいけ! アンパンマン いのちの星のドーリィ』(2006年)

 「何のために生まれて、何をして生きるのか」という一大テーマに取り組みました。意外に大人っぽいのです、『アンパンマン』。矢野博之監督とはその後も何本か『アンパンマン』映画を作りましたが、その都度、この『ドーリィ』が、手ごわい仮想ライバルとして立ちはだかるのです。

●『レ・ミゼラブル 少女コゼット』(2007年)

 放映がBSフジだったため、知名度が低めなのがとても残念です。桜井弘明監督と一緒に、めちゃくちゃ苦労して作りました。原作者ヴィクトル・ユゴーが言いたかったことを、表現は違えど、ちゃんとアニメにできたと思っています。

●PROFILE
金春智子 脚本家。辻真先に師事し、『一休さん』でデビュー。近年の代表作にシリーズ構成・脚本を務めた『NANA』『チーズスイートホーム』などがある。最新作は『君に届け 2ND SEASON』。Twitterのアカウントは @tomoparu313

(11.01.18)