もっとアニメを観よう2011

第25回 上江洲誠が選んだ
「僕の10代を彩ったOVA達10本」

 今、僕は30代。
 かつて、10代の頃の僕を熱狂させたOVA群から10本をセレクトして紹介したいと思います。
 今に至る僕を形作った劇薬です。
 その頃の僕の月の小遣いは1000〜2000円ぐらい。新作ビデオのレンタル料は1泊2日で800円! そこで裏技。当日返却を使うと500円。……それでも小・中学生には厳しい!
 そんな中、なんとかやりくりをして観倒した愛おしいOVA達。
 中には、実は不出来だったりした物もありました。有料だというのにダメな物はダメなんだという現実も思い知りました。スタッフや制作会社によってムラもありました。そうやって子供心に僕は「アニメを知って」いったのです。ただ無邪気に楽しむ事を卒業してしまい、修羅の道へ。
 ええ、ちゃんと今も修羅道におりますよ。

●『破邪大星 彈劾凰』(1987)

 何よりも真っ先に思いつきます。
 同級生のS君(今カメラマン、今も友達)がレンタルしてきて、一緒に「TVでやってないロボットすげー!」と狂喜しました。ワタルのプラクション等で遊んでいた子供がOVAという未知のメディアを意識した瞬間です。数え切れないほど繰り返し観ました(何度もレンタルした)。
 早く超合金魂で出してください!

●『冥王計画ゼオライマー』(1988)

 同監督によるダンガイオーに続く新作という事で、発売日を指折り数えていました。宿題とか運動会の練習とか手につかなかったです。
 金で売られる主人公、彼はゼオライマーのパイロットとなるべく育てられた試験管ベイビーだったのだ(ここまで数分)——というハードな導入部にシビれます。敵メンバーの設定も悲惨。
 当時、識者には批判されていたかもしれませんが、設定過多でスケールの大きい話を4話で畳んでしまう無理くり感もむしろ好きで、僕にとっては『エヴァンゲリオン』よりも7年早いロボットアニメショックでした。
 後に原作コミックがある事を知り、まるで違う事も大ショックで(そもそも主人公ロボのデザインから違う)、OVAってメディアはすげえぜと感心しました。
 ちなみに僕、今でもあの複雑怪奇なアニメ・ゼオライマーを空で描けます。それぐらい好きだったんです森木靖泰さんのメカ。

●『吸血姫 美夕』(1988)

 『戦え! イクサー1』とどちらを選ぶか悩んだのですが、僕にとってはこっち。
 文学や古典やアングラ映画をまだを知らない小僧が、無情さや不条理さってカッケーと思った瞬間でした。
 クールビューティの美夕というキャラが好き過ぎて、中学の美術の課題に描いて提出したりしました。臆面もなくそんな事ができたのは、当時、大阪のよみうりテレビではちょいちょいOVAが放送されてまして、クラスメイト達も割とアニメに明るかったという状況があったからかなと(余談:『PATLABOR[OVA版]』『美夕』は土曜の夕方、いつもは『天才バカボン』が再放送している枠で放送されたと記憶しています)。

 ——以上、ここまでは平野俊弘監督の作品ですね。
 僕のアニメがやたら詰め込んでる感があるのは、この時代の平野監督(&会川昇さんの脚本)作品の影響があると思います(編注:平野俊弘は現・平野俊貴、会川昇は現・會川昇)。

●『ドリームハンター 麗夢』(1985)

 今振り返ると、これが「キャラ萌え」という感情だったんだなと思います。
 見た目は少女なのに、探偵事務所を構え、車を乗り回す……という事は、彼女は成人。だけどそこは劇中では詳細に語られない。このムズムズした感じが面白い。
 今僕が「年上なのに幼く見えるキャラ」に胸ときめくのは麗夢のせいだと思います(あと『3×3EYES』のパイも)。
 設定や話が適当(劇中でキャラの名前を間違えたりする)なんだけど、そこがいいじゃないか、楽しもうぜ! という感じが好きです。
 現在放送中の『これはゾンビですか?』等は、麗夢みたいなの書いてるなあ、嬉しいなあ、と思いながら取り組んでいます。

●『CALL ME トゥナイト』(1986)

 興奮して鼻血吹いたら怪物に変身。特に理由はない! お話はない! 無茶苦茶だ!
 キャラが可愛いし、触手モンスターがグリグリ動く! 何か不服でも?
 いいじゃないか! いいじゃないかー!!

●『禁断の黙示録 クリスタルトライアングル』(1987)

 これで「トンデモ系」に目覚めました。空海やラスプーチンが敵キャラになってもいいんだ!
 考古学者の主人公が、終盤にケンシロウ的なキャラに化けるいきあたりばったりさがツボ。感動的にヒロインと離別した後、ラストシーンの唐突なハードボイルドさもクール。
 気を練りながら「暖まってきた……」という台詞が僕の中だけで大ブレイク!

●『METAL SKIN PANIC MADOX-01』(1987)

 メカ! 美少女! 弾薬! 銃撃! 爆発!
 当時のアニメファンの嗜好をすっきりはっきりと物語っています。
 デートの約束がある主人公、うっかり軍の新型パワードスーツに乗り込んでしまう。乗り込むなよ!
 ——そこがイイ!
 乗り込みたかったんだよ!
 デートの約束に遅れまいと、そのまま行軍する無茶さ! イイ!
 これがギャグアニメじゃないというカオスさが当時のOVAらしさだと思います。作り込まれたメカアニメとして売られていたんですよ?
 本編は30分ですが、実写特典映像の自衛隊演習(だったかな?)がそれ以上の尺で入っていたのが忘れられません。

●『強殖装甲ガイバー』(1986)

 当時まだ児童の心を持っていた僕には衝撃的な面白さでした。「変身ヒーロー物なのに、物語がハードで大人っぽい!」と(ちなみに前出のS君は家族旅行の際、フェリーの映画室で観たそうです。バルキュリア監察官(女)の殖装シーンが気まずい!)。
 すぐに「月刊少年キャプテン」を購読するようになりました。マニア系漫画雑誌を初めて買ったんじゃなかったかな?
 ガイバーのいいところは、ただハードなだけじゃなくて、特撮ヒーロー物の面白味も維持している事ですね。
 『高屋良樹』→『ちみもりを』→『ゼオライマー』と僕の小さな知識が繋がった時、マンガをマニアックに楽しむ回路が生まれました。「原作」「系譜」等といった物を意識するようになった立派なオタクの誕生です(余談:2010年に発表した無料DL美少女ゲーム『se・きらら』の背景内に原作ゼオライマーがいます。高屋先生に許可をいただけた時、心底嬉しかったです。モンスターもデザインしていただけました。うひょう!)。

●『強殖装甲ガイバー』(1989)

 1986年版とは別作品。
 その頃はいっぱしのガイバーマニアになっていた僕で「原作ファンの気持ちを踏みにじったら許さないぞ。ブヒブヒ」とすっかり嫌なオタクに育っていました。が、大満足。納得の面白さでした。
 脚本家・三条陸さんの名前は『ダイの大冒険』ではなくて、先にこちらで覚えました。
 限られた尺内での素晴らしい再構成。
 原作ファンを納得させながら、独立した映像作品としても破綻なく面白くする。こうすればよいんだ! 目から鱗! ——と、今現在も、お手本にさせていただいております。
 ちなみに三条陸さんが書くところの説明台詞が大好きでして、真似したくてたまりません。以下、記憶で書きました。
 「俺はハイパーゾアノイド5人衆が1人ザンクルス! 俺の腕は微細な襞の集合体。高周波の振動でどんなものでもまっぷたつにする! (ガイバーに斬り掛かられる)なに!? 貴様のブレードも高周波!? (頭上から不意打ちを食らって死ぬ)グギャーッ!」
 強キャラの初登場と退場を一瞬で済ます鮮やかさ。最高だ!
 『ガイキングLOD』や『鬼太郎[5期]』の説明台詞回しも流石だと、ニヤニヤしながら見ていました。

●『トップをねらえ! Gun Buster』(1988)

 少年時代に狂ったという選び方では、ここいらがトドメになります。
 どこまでも小ネタを作り込む面白さ。ああOVAを観ているなあという喜びがあります。
 話数が進むごとにジャンルが変わっていくという構成も大好きですね。
 大真面目にやればやるほど笑ってしまう、だけど最後に感動、という不思議な感覚。最終回を無理矢理にでも最終回らしく書きたいという僕の嗜好は、『トップ』のせいかもしれません。
 この先『ジャイアント ロボ』や『MACROSS PLUS』等、とても素晴らしい作品が続くのですが、その頃は僕もいっぱしの嫌なオタクである事を自覚しており、見方が変わってきていました。ブヒブヒ。

 以上、つらつらととりとめのない文章となりました。お目汚し失礼しました。よかったらレンタルビデオ屋で探してみてください(中古ビデオ屋の方がまだ見つかるかなー?)。
 最後に一言。つまり僕はOVAらしいOVAを作りたいのです。独り言ですよ、独り言。

●PROFILE
上江洲誠 脚本家。11月8日生まれ。『陸上防衛隊まおちゃん』でデビュー。代表作にシリーズ構成・脚本を務めた『うたわれるもの』『School Days』『瀬戸の花嫁』『刀語』『聖痕のクェイサー』等がある。最新作は『これは×ゾンビ ですか?』。公式サイトは上江洲誠公式 天才アホマゲドン。Twitterのアカウントは@uezux

(11.01.27)