もっとアニメを観よう2011
第20回
西村誠芳が選んだ「影響を受けたような気がしたり、
ただ好きなだけなアニメ20本+2本」
- ●『タイガー マスク』
- ●『ど根性 ガエル』
- ●『海底3万マイル』
- ●『宇宙戦艦 ヤマト』
- ●『エースをねらえ![劇場]』
- ●『宝島』
- ●『サイボーグ009[1979年版]』OP
- ●『ルパン三世[劇場版]』
- ●『伝説巨神 イデオン』TV&劇場版
- ●『鉄人28号[1980年版]』
- ●『Gライタン』なかむらたかし&井口忠一回
- ●「DAICON III」OPアニメーション
- ●『逆転イッパツマン』二宮常雄回
- ●『うる星やつら』
- ●『カムイの剣』
- ●『魔法のスター マジカルエミ』
- ●『機甲界ガリアン VOLIII 鉄の紋章』
- ●『ノエイン もうひとりの君へ』
- ●『ベルヴィル・ランデブー』
- ●『REDLINE』
- ●『リタと ナントカ』
番外
●『戦場でワルツを』
●『コララインとボタンの魔女』
順不同です。主に作画の影響が多いのですが、それに限らず好きな作品を挙げてみました。なんとなく時代の流れに合わせてますが、一部順番が入れ替わってるかもです。
●『タイガー マスク』
記憶をたどる限りで、一番最初に「絵柄を真似して絵を描いた最初の作品」でして、間違いなく自分の絵の原点のひとつです。木村圭市郎さんのデザインとスタイル、最終回近辺の盛り上がりと最終回の小松原一男さんの作画は今観ても色褪せません。
●『ど根性 ガエル』
Aプロ〜亜細亜堂の作画スタイルは影響を受けたもののひとつです。動きと止メの対比が素晴らしい。小林治さん、芝山努さんもですが、近藤喜文さんや百瀬義行さんといった方々の作画も含め見所多しです。
●『海底3万マイル』
火焔竜の表現がとにかく凄い。極端に言うならそれしかないけど、個人的にはそれだけで十分な作品です。
●『宇宙戦艦 ヤマト』
第1シリーズは今観ると粗も多くありますが、それを超える魅力も多数あります。個人的には、友永和秀さんの描くヤマトのカッコよさはアニメのメカが好きな人全員に観てほしい。
●『エースをねらえ![劇場]』
出崎統監督作品はどれも好きなのですが、劇場作品から1本となるとこれになってしまいます。わずか90分に詰め込まれた疾走感。この作品を観ると、結果を描くことよりも過程を描く大切さを実感します。DVDの2バージョン目では、出崎監督のコメンタリーが聴けるのも嬉しい(聞き手はアニメ様)。
●『宝島』
出崎監督作品が続きます。TVでは『ガンバの冒険』と悩みましたが、本編もさることながら、大橋学さんのOP/EDの魅力を! と思い、こちらを選択。本編の流れも汲みながら、またひとつの世界を作り上げています。
●『サイボーグ009[1979年版]』OP
金田伊功さんも多大なる影響を受けたアニメーターのお1人なのですが、主なところはもうすでに皆さんがお勧めしているので、『009』のOPを。金田作画の魅力はアクションだけでなく、情緒を感じるキャラクターの表情も魅力なのです。
●『ルパン三世[劇場版]』
Aプロ出身のアニメーターさんの中で一番好きなのは青木悠三さんかもしれません。ということで、本作のカーチェイスシーンを。ラフすぎると思うか、そこに魅力を感じるかは観る人次第でしょうけど、自分はこういうアニメに魅力を感じます。椛島義夫さんの描くルパンファミリーも魅力的です。不二子は椛島さんのものが一番好きなのです。
●『伝説巨神 イデオン』TV&劇場版
発動編の鬼気迫る映像は、アニメの到達したひとつの何かだと思います。何かが何かはわかりませんが。TV版でも二宮常雄さん作画監督での「死闘・ゲルの恐怖」(原画に渡辺浩さん)や、話数はど忘れしましたが板野一郎さんの作画によるアディゴのスピード感や描写の細かさ等にひっくり返りそうになった回など、見ごたえのある回があります(編集部注:29話「閃光の剣」が有名)。
●『鉄人28号[1980年版]』
とにかくスタジオNo.1! そしてスタジオZ5! 食い入るように観てました。
●『Gライタン』なかむらたかし&井口忠一回
とにかくお2人の回の作画には圧倒されました。TVアニメなのに、TVアニメのスケールを遥かに超える作画! おそらく今観ても、圧倒されるカットが少なからずあるはずです。須田正己さんのOPもお勧め。
●「DAICON III」OPアニメ
これはもう、超ド級の衝撃! アマチュアがここまで作れるのか! と衝撃を受けました。「ことわざ辞典 へたな鉄砲も 数うちゃあたる!」「じょうぶなタイヤ!」等、庵野秀明さんの名前は憧れとともに刷り込まれたのでした。
●『タイムボカンシリーズ 逆転 イッパツマン』二宮常雄回
好きなアニメーターのお1人、二宮常雄さんのお仕事としてとりあえずイッパツマンを推しておきます。ひたすらカッコいいポージングと、コミカルなシーンはディフォルメの効いたポーズとトリッキーなタイミング。動きの省略という意味ではAプロ系作画と合わせて憧れたスタイルでした。リアルもコミカルも描きこなす仕事も魅力的です。『ザ・ウルトラマン』や『メイプルタウン物語』などの、1人原画作品の方をお勧めするべきかもしれません。
●『うる星やつら』
山下将仁さんらの暴走作画が語られがちですが、ここはラムちゃんの飛行の基本も作られた高橋資祐さんの作画を推しておきます。ディフォルメも含め、柔らかくかつトリッキーな動きが魅力でした。高橋さんはコンテも兼ねるのが基本で、作画もトータルしてのギャグが素晴らしい。『うる星やつら』は、南家こうじさん担当されたのOP/EDも、どれもこれも素晴らしすぎます。
●『カムイの剣』
好きなりんたろう監督の作品を1本あげるとしたら……と悩んでこれ。『999』『幻魔大戦』をあげる方は多いので。音楽と相まった掴みの上手さは『さよなら 銀河鉄道999 —アンドロメダ終着駅—』と並ぶ素晴らしさ。後半が色々とグダグダになってしまうのは残念ですが、トータル的に作画もよいので、未見の方は一度観てほしい作品です。
●『魔法のスター マジカルエミ』
安濃高志監督の生活観や情緒を重視した演出が好きでした。80年代らしい作画のバラエティさも魅力的。最終の3話はTVアニメ史に残る傑作だと信じて止みません。OVA『蝉時雨』『雲光る』も含めてお勧めします。
●『機甲界ガリアン VOLIII 鉄の紋章』
アニメアール、スゲー!! としか言いようがなく。特にクライマックスの沖浦啓之さんと吉田徹さんによる鉄巨神と邪神兵のバトルはメカアニメ史で外せないシーンかと。ラストでは若き日の大平晋也さんの仕事も観られます。
●『ノエイン もうひとりの君へ』
岸田隆宏さんの流行に影響されないデザインや、シリーズの随所で観られるりょーちもさんらのダイナミックな作画に心を奪われることもしばしば。特に12話(だったと記憶しています)のアクションには度肝を抜かれました。作品自体もジュブナイルSF感が漂う仕上がりで大好きです。
●『ベルヴィル・ランデブー』
商業アニメでありながら、漂ってくるアート感。フランス製ということもあってか、娯楽に寄りすぎていない不思議な感覚がいい意味で引っかかりを感じます。何よりも、画面全体のディフォルメの感覚が魅力的です。
●『REDLINE』
今年度の劇場アニメなので、お勧めするまでもなく皆さん観ていると思いますが……。色々と高ぶるアニメ映画ですので、観逃してしまった方は家で観て、劇場で鑑賞しなかった事を後悔しましょう。
●『リタと ナントカ』
現在放映中のNHK教育のTVアニメから。子供の持つ妄想や世界を日常と合わせて描く作風もいいのですが、なによりも鉛筆線のタッチを生かした丁寧な作画と、水彩タッチで着色された画面が魅力的なのです。観たことのない人は、さっそく明日の朝にでも観てみましょう。
番外
●『戦場でワルツを』
イスラエル製のCGアニメ映画。アニメでドキュメンタリーを描くという手法、その描くものも含め、日本ではまず作られる事のないタイプの作品だと思います。アニメーションという手法の幅の広さのひとつとしても、純粋に優れた映画としても見応えのある作品です。
●『コララインとボタンの魔女』
番外として人形アニメ。スクリーンで観て、極まった人形アニメのアニメート技術に震えがきました。特に、冒頭の数分間のキャラクターの芝居、表情等、人形アニメであるとは信じられない拘りまくった映像です。手描き、人形といった区別なしに、凄いものは凄いとただただ刺激を受けるのです。
●PROFILE
西村誠芳 スタジオダブで原画、作画監督、キャラクターデザイナーとして活躍。現在はコナミデジタルエンタテインメントでゲーム制作に関わる。代表作に『CITY HUNTER』『新機動戦記 ガンダムW』『機動新世紀 ガンダムX』がある。Twitterのアカウントは @NISHINOB 。
(11.01.06)