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REVIEW
CD NAVIGATION[早川優]

第2回 「ANIMEX1200SP」他
アニメ名作音盤をリーズナブル・プライスで!! コレクション充実への好機!!

 ある年代までのアニメ・ファンにとって、コロムビアという名前は「アニメ音楽の殿堂」というキャッチ・フレーズとともに記憶されているはずだ。同社の学芸部は日本で初めて「アニメ音楽」というジャンルを築き上げた。やがて、アニメがその対象を子供から幅広い年齢へと拡げるに及び、アニメ音楽は一大産業へと成長、コロムビアにもライバルとなるレーベルが誕生し、鎬を削り合う現在の状況に至っている。コロムビアがアニメの黎明期に作り上げたラインナップこそアニメ音楽の基礎であり、その豊富なカタログはアニメの殿堂と呼ぶに相応しい。
 さて、日本コロムビアがコロムビアミュージックエンタテインメントに名前を変えてから、その商業戦略はよりアグレッシブになっていったように思う。これはIT環境の拡充から従来のソフト・ビジネスが変化を余儀なくされた流れとも無関係ではないだろう。いわばコロムビアは商品面での攻勢に転じたのだ。SCSで知られる同社の児童物シングル・レコードを、カタログ的にCD化していった企画「昭和キッズTVシングルス」などもその一例だ。
 そんな中、2003年の秋に再発シリーズがスタートする。「ANIMEX1200」のタイトルで、コロムビアの定番たるアニメ・サントラ30アイテムを一気に廉価で再発したのだ。ラインナップには長らくCD化が待たれていた作品も多く含まれ、ファンの間で話題を呼んだ。大型量販店の中には、シリーズを数枚買うと1枚ボーナスをつけるといった独自のキャンペーンを展開したところもあり、市場での好評に応える形で各30タイトルずつ、第4弾まで発売された。
 筆者もこのシリーズには微細ながら関わりを持っており、書きにくい部分ではあるが敢えて記しておくと、ファンの間ではこのシリーズに関していくつかの意見があることも事実。それは、オリジナルのジャケット内のライナーやデータといった文字情報が復刻されていない点、オリジナル盤に手を加えないという編集方針から追加曲は一切ないという点のふたつに集約されよう。これらは1200円という値段設定の実現のため、また契約上の諸問題からやむを得ず採られた処置ではあるのだが、マニアックな消費者層を有するジャンルの商品だけに、惜しまれる部分ではある。
 ヘビーユーザー的には看過できない部分はあるにせよ、そのタイトル数と値ごろ感は大きな魅力である。「ANIMEX1200」と同時期には、主題歌・挿入歌のコレクションも、「スーパーロボット」「日本アニメーション」「ウルトラマン」「仮面ライダー」「スーパー戦隊」など、ジャンルやシリーズ毎の新編集でスタート。いってみれば、コロムビアがもつ全アニメ・カタログの総まくり、アーカイヴ化とみると分かりやすい。

 その「ANIMEX」に4月から新シリーズが加わった。内容は別途リストを参照していただきたいが、まずは、これまでの「ANIMEX」がインストのサントラ音盤(組曲、テーマ音楽集、BGMコレクション等)を復刻対象にしていたのに対して、歌曲アルバム(ヒット曲集)にスポットを当てた「ANIMEX1300」。歌曲を収録することで歌詩の掲載等の関係から値段が100円アップしているが、充分に許容範囲だろう。
 このシリーズの最初のラインナップ選出に当たっては、筆者もアイディアを出させていただいた。復刻が長年の夢だった「ジャングル大帝 ヒット・パレード」、菊池俊輔による独特のメロディが存分に満喫できるレアLP「ラ・セーヌの星」と「タイガーマスク二世」。越部信義の良質な音楽がたっぷりつまった「みんなで歌おう!みなしごハッチ」、コミカル歌謡の名盤としても評価の高い「いなかっぺ大将 ヒットアルバム わしは いなかっぺ大将だス!」の、レアな竜の子2大LP。そして、当時はカセットのみの発売で、ネット・オークションへの出品時には数万円の落札価格がついた「メイプルタウン物語 ヒット曲集」。私事ながら当時から様々な理由で入手し損なった盤も多く、オリジナルの形でCD化するに相応しいタイトルが並んでいると思う。

 さて、5月の新譜には『宇宙戦艦ヤマト』の「BGMコレクション」の再発シリーズがラインナップされた。これは、1995年の『ヤマト』初CD化ラッシュの際、アナログで出ていたTV1、2作目の「BGMコレクション」アルバムに続く形で、未収録の映像ダビング用テイクの音楽を中心に新構成したシリーズ。劇中使用に力点を置いて新構成した「ETERNAL EDITION」、鑑賞用に徹した当時の「音楽集」をリマスタリングしたCD-BOXもあるが、この「BGMコレクション」は未収録集の色合いが強く、特に『新たなる旅立ち』以降の新構成盤については、本編での完全な未使用曲や別ヴァージョンを主体にした構成になっているのがミソ。それゆえ「ETERNAL EDITION」をお持ちでも、(特にVol.3以降は)必須の内容となっている。今回は音質的に聴き劣りのするトラックに関して、現存するマスターテープからの差し替えも行われている。構成は近年のコロムビアの『ヤマト』アイテムには欠かせない吉田知弘。音響監督としても活躍する氏は「ETERNAL EDITION」同様にデジタルによる音のクリンナップも自ら手がけている。また、本シリーズでは解説書原稿の復刻も行われた。

 最後にご紹介するのが、筆者も新規ライナーの執筆に関わらせていただいた「ANIMEX1200SP」。過去の「ANIMEX」ではコロムビアの自社アイテムが再発対象だったが、今回は他社発売商品を取り上げているのがポイントである。カタログの核になるのはアポロン=バンダイ・ミュージック音源。すべてCD時代に入ってからの商品だが、すでにバンダイ・ミュージックが活動を停止しており、これらの商品も市場では手に入りにくくなっていた矢先だけに安価での再発は喜ばしい。
 ラインナップはオリジナル・ビデオや劇場用に作られた「ウルトラマン」「仮面ライダー」の特撮関連5枚を含む20タイトル。個人的なお勧めは、1960年代のヨーロッパ映画を想起させる周防義和の洒脱な音楽が楽しめる「PURURUN![天使になるもんっ!]オリジナル・サウンドトラック」、文化放送開局40周年記念ドラマ「ガイア・ギア」のために川崎真弘が50名編成のオーケストラを率いて書き下ろした音楽を収録したサントラ2タイトル、心に響く主題歌・挿入歌とともに、日曜朝の東映アニメには欠かせない職人の一人である奥慶一が腕を奮った背景音楽を収め、名盤の誉れ高い『ママレード・ボーイ』アルバムなど。特撮タイトルに関しても、今をときめく佐橋俊彦が海外TV映画音楽へのオマージュを比較的ストレートに発揮した音楽であり、「開運!なんでも鑑定団」のジングル流用曲も収める「ウルトラマンパワード」、燃えるオケ+シンセ・サウンド満載の川村栄二による劇場版「ライダー」サウンド2題ほか、聴きどころ満載だ。
 以上、最近のコロムビアの復刻アイテムを3シリーズにわたってご紹介させていただいた。買う側にとっては嬉しい悲鳴を上げざるを得ない大量のリリース続きだが、いずれも繰り返しの鑑賞に堪え得る名盤揃いであり、発売当時に買い逃された方、愛好家諸氏に置かれてははコレクションを補完する絶好の機会として、早めの入手をお勧めする次第である。
(執筆/早川 優)

■LINE UP
●ANIMEX1300 SONG COLLECTION
ジャングル大帝 ヒット・パレード COCX-33161
ラ・セーヌの星 COCX-33162
昆虫物語みなしごハッチ みんなで歌おう!みなしごハッチ COCX-33163
いなかっぺ大将 ヒットアルバム わしは いなかっぺ大将だス! COCX-33164
マジンガーZ ぼくらのマジンガーZ COCX-33165
ゲッターロボ アタック!ゲッターロボ COCX-33166
宇宙海賊キャプテンハーロック COCX-33167
タイガーマスク二世 COCX-33168
愛してナイト ヒット曲集〜Yakko,I Love You〜 COCX-33168
メイプルタウン物語 ヒット曲集 COCX-33170
2005年4月27日発売 各1365円(税込)
[amazon]

●宇宙戦艦ヤマト オリジナルBGMコレクション シリーズ
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト PART-1 COCX-33200
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト PART-2 COCX-33201
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト 新たなる旅立ち COCX-33202
オリジナルBGMコレクション ヤマトよ永遠に COCX-33203
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマトIII COCX-33204
オリジナルBGMコレクション 宇宙戦艦ヤマト完結編 COCX-33205
2005年5月18日発売 各2100円(税込)
[amazon]

●ANIMEX1200SP
仮面ライダーZO オリジナル・サウンドトラック COCC-72181
仮面ライダーJ オリジナル・サウンドトラック COCC-72182
真・仮面ライダー 序章(プロローグ) COCC-72183
ウルトラマンパワード 音楽集 ―MUSIC COLLECTION― COCC-72184
ウルトラマンパワード サウンド大百科 COCC-72185
ふしぎ遊戯 オリジナル・サウンドトラック COCC-72186
PURURUN![天使になるもんっ!]オリジナル・サウンドトラック COCC-72187
魔法陣グルグル オリジナル・サウンドトラック COCC-72188
魔法陣グルグル オリジナル・サウンドトラック VOL.2 COCC-72189
みかん絵日記 イメージ・アルバム みかん音楽日記 COCC-72190
ジャングルの王者ターちゃん オリジナル・サウンドトラック COCC-72191
ジャングルの王者ターちゃん オリジナル・サウンドトラック Vol.II COCC-72192
ガイア・ギア オリジナル・サウンドトラック Vol.1 COCC-72193
ガイア・ギア オリジナル・サウンドトラック Vol.2 COCC-72194
ママレード・ボーイ Vol.1 光希のミュージック・モノローグ〜劇伴音楽集〜 COCC-72195
ママレード・ボーイ Vol.2 メッセージ・愛する人へ…〜劇伴&ナレーションアルバム〜 COCC-72196
ママレード・ボーイ Vol.6 神様がいてくれる〜新録音劇伴音楽集〜 COCC-72197
ご近所物語 ご近所CD通信PARTI オリジナル・サウンドトラックその1 COCC-72198
ご近所物語 ご近所CD通信PART II オリジナル・サウンドトラックその2 COCC-72199
おジャ魔女どれみ おジャ魔女CDくらぶ その2 おジャ魔女BGMコレクション COCC-72200
2005年7月6日発売予定 各1260円(税込)
[amazon]


■執筆者からの一言
 筆者は「ANIMEX1300 SONG COLLECTION」の企画に携わらせていただいた。実をいうと、当初はオリジナル収録曲に加えて、可能な限りのカラオケ・テイクや、「ラ・セーヌの星」の場合には堀江美都子版の正副主題歌の追加収録なども提案させていただいていた。コロムビアのスタッフの皆さんも前向きだったが、残念ながら実現はしなかった。そこには色々な理由があるが、「ANIMEX1200」の箇所で触れたように、ボーナス・トラックを加えてしまうと、「当時のままの商品復刻」という意味合いが崩れてしまい、契約上の諸問題が発生するという部分が大きいようだ。ブックレット内のフルカラーによるゴージャスな歌詩カードの復刻も、今回は断念せざるを得なかった。ただ、これなどは、たとえばコロムビアのサイト上でPDF形式のファイルを有料にて頒布するサービスを行えないものだろうか? いかがでしょう、担当者諸氏。
 

●第3回へ続く

(05.06.16)

 
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