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REVIEW
CD NAVIGATION[早川優]

第6回
「仮面ライダー響鬼【音劇盤】オリジナル・サウンドトラックアルバム」
佐橋俊彦が挑戦するアバンギャルドなヒーロー・サウンド!!

 本コーナーはあくまでWEBアニメスタイルの一部であるが、今回取り上げるのは特撮作品である。前回も何気なく東宝の特撮映画「惑星大戦争」に触れさせていただいているが、今回ご紹介するのは現役バリバリの実写特撮サントラだ。一応簡単に弁明しておくと、昔からアニメと特撮は「テレビまんが」の二大看板として認識されてきた歴史があり、こと音楽というフィルムの仕上げ段階の作業では両者に共通する重要なスタッフも多い。「響鬼」の佐橋俊彦もその好例となる1人だ。それゆえ、アニメ・ファンにお勧めしたいCDの中にはどうしても実写作品が混ざってくる次第。今後も実写作品を取り上げる機会がたびたび出てくると思うが、ご了承の程を。

 さて、本題に入ろう。
 今、佐橋俊彦がノリにノッている。大好評を博した『機動戦士ガンダムSEED』と放映中の続編『DESTINY』で、自身の背景音楽の現時点での集大成ともいえる充実した仕事ぶりを見せていると思えば、こうして、特撮の分野でも久々に平成「仮面ライダー」の仕事に戻ってきた。前述のように、佐橋俊彦はアニメ・特撮といったジャンルの垣根を軽々と跳び越えて、鮮やかな彩りを作品に加えることができる指折りの作曲家なのである。なにせ、『ガンダム』「戦隊」「仮面ライダー」「ウルトラマン」という、日本が誇る最強のキャラクター・フランチャイズのサウンドトラックすべてに関わった作家は、佐橋を置いて他にはいないのだ。
 佐橋は平成「仮面ライダー」の嚆矢となった「クウガ」の音楽を担当し、ロックを前面に押し出したスコアで好評を得て、次作「アギト」にも登板した。その後に続く3作では別の作家と交代したが、この「響鬼」では「クウガ」のプロデューサーだった高寺成紀のカムバックに合わせ、再び「仮面ライダー」に取り組むことになった。
 鬼をモティーフにしたヒーローが太鼓を武器に敵と戦う。そんな「響鬼」の世界は、限られた特撮ヒーロー番組のフォーマットの中で、これまでにない試みを行うことを意識して構築されている。その現場の意識の流れが音楽にも強く作用して生まれたのが「響鬼」のスコアだ。第1回放映の「一之巻 響く鬼」を固唾を呑んで観始めて、尖がった音楽演出にたまげたのは筆者だけではあるまい。
 オープニングを飾るカッコ良さ満点のインスト曲「輝」、開幕早々炸裂するミュージカル演出、そして注目の本編音楽は……何と打楽器だけで演奏!? 高寺作品ならではの飄々としたオフ・ビート感覚の世界観に、淡々とリズムを刻むスコアがメチャ合ってるじゃん!!
 6月にリリースされたサントラ(これもエイベックスに発売元が移ってからの平成「ライダー」では異例の発売スケジュール[注])のライナーノーツで、佐橋は「響鬼」の作曲プランとして以下の2点を挙げている。曰く、和のテイストを生かすことと、太鼓の使い手のライダーにふさわしく打楽器を効果的に使った作曲をすること。この2点を押さえつつ、無難なセンでまとめることは百戦錬磨の佐橋にとってたやすいことだったはずだ。たとえば、かつての東映実写版「スパイダーマン」で渡辺宙明が試みたパーカッションをふんだんに取り入れた“エキセントリック・サウンド”の和風テイスト版、とでもいったような選択肢もあったろう。しかし、「響鬼」スタッフ全体に満ち溢れる未踏の領域へ挑戦せんとする気迫は、佐橋を極めてアバンギャルドな手法へ導くことになった。
 かくして書かれた第1回録音分の楽曲は、そのすべてが打楽器だけで構成されることになった。打楽器だけで劇音楽の構築は可能であると読み、躊躇わずに実行に移した佐橋の自信と、失敗したら取り返しがつかなくなる試みにゴーサインを出した高寺プロデューサーの決断は大変なものだ。
 劇中音楽の楽器編成は、くだんの和太鼓に加え、ドラムス、ベース、各種ラテン・パーカッションが中核を成し、メロディはマリンバやビブラフォンが勤める。「劇伴」には強い武器となる木管も弦もまったく存在しない。しかし、佐橋の音楽は物語の流れや雰囲気を実に絶妙にリードし、巧みに盛り上げていくのだ。追加録音曲では、トランペット型の音撃管「烈風」を用いる第2のライダー・威吹鬼の登場に合わせてペットが編成に加わり、音楽はより豊かな響きを手に入れている。
 このストイックな劇音楽の成り立ちには、打楽器のみという縛りから解き放たれた場所に位置する前述のオープニング・テーマ「輝」と、布施明が熱唱するエンディング主題歌「少年よ」という圧倒的な完成度の2曲の存在がある。ほぼ打楽器だけで打ち鳴らされる劇音楽の音響は、色彩感に溢れるふたつのテーマ音楽と共鳴し、それぞれが観る者に際立った印象を残すという理想的な関係性を有しているのだ。
 「輝」に関しては、様々な楽器編成の違いで9種ものバージョンが録音され、番組ではエピソード毎に使い分けるという、ファン心をくすぐらずにおかないニクイ試みが行われている。ともに第1シリーズの『ルパン三世』『宇宙戦艦ヤマト』の例にあるごとく、本来、簡単には変わらないはずのオープニング曲が話数によって微妙に異なるのって、とってもそそられるのだ。
 一方、番組のエンディングを大クレッシェンドで盛り立てる「少年よ」。佐橋とは「星獣戦隊ギンガマン」や2本の平成「ライダー」で名コンビぶりを発揮している藤林聖子の歌詞を得て、布施明が貫禄のボーカルを聴かせてくれる。ここのところの平成「ライダー」にはエンディング・クレジットがなかったが、やはり子供番組には、次回の放映を心待ちにさせてくれるようなエンディング・テーマの存在は不可欠であることを実感させられる。
 佐橋の優れたメロディ・メーカーぶりが遺憾なく発揮され、しかも日本に立脚するヒーローならではの雰囲気と世界観を湛えた「輝」と「少年よ」は、間違いなく21世紀に入って書かれた最高の番組テーマ曲のひとつだろう。今回のサントラには、この「輝」の全バージョンを一挙に収録。実は一消費者としては、出し惜しみをするのではないか、と思っていただけに、これまた嬉しいサプライズとなった。
 「響鬼」の作品作りの流儀に合わせて、ブックレットのデザインや紙質にも徹底してこだわったというCDのアートワークを含めて、是非、多くの方に味わっていただきたい野心作である。
 なお、8月10日には、バトルイメージソング「極めれば音撃!!」を含むブックCDが、8月31日には、Rin' featuring m.c.A・Tによる劇場版「響鬼」主題歌「Flashback」と、オリジナル・サウンドトラックアルバム「劇場版「仮面ライダー響鬼と7人 の戦鬼」音劇盤」のリリースが予定されている。しばらくは「響鬼」の音楽の動静が気になる日々が続きそうだ。
(執筆/早川 優)

注)「龍騎」「555」「ブレイド」の3作のテレビ・サントラは、夏の劇場版の公開にあわせた映画サントラ盤のボーナス・トラックとして、ハイライト曲のみ先行して発売。残された大半の音源は、番組終了後にリリースされる音源完全収録のCD―BOXまで待つ必要があった。


■DATA
仮面ライダー響鬼【音劇盤】オリジナル・サウンドトラックアルバム
全55トラック 収録時間:64分07秒
Avex mode AVCA22307
2005年6月15日発売 定価3059円 (税込)
[Amazon]

■執筆者からの一言
 「響鬼」サントラ第1集の構成は、編集者・ライターの杉田篤彦が担当。「宇宙船」やファンコレ関係の活字媒体の仕事のほか、『超電導ロボ 鉄人28号FX』などの作品ではスタジオOXを率いてメカニック・デザインを手がけた才人だ。
 彼は今回のサントラのライナーに「アルバム・コンセプト」という文章を寄せている。そこには「耳年増になりがちな楽曲解説も敢えて外し」との一節があり、私自身アニメ・特撮サントラCDのリリースに関わってきた者として、大いに考えさせられた。
 私も、サントラ盤に余計な曲目紹介の文章は必ずしも必要ないと思う。番組なり映画なりの中で印象的に用いられている音楽が網羅され、それぞれが適切な場所に的確な収録曲名で配置されていれば、という条件つきで。
 ただ、一リスナーとしては、曲目解説を読みながらサントラを聴くという行為がいかに愉しいものであるかを、これまでの人生で味わい続けてきたこともあり、可能な限り自分の関係した盤に関しては曲目解説の類は入れたいと考えている。
 ここで生じる悩みとしては、どうしてもサントラCDにおける曲目解説の場合、どこそこのシーンで使われた何々、という類型にはまりがちであり、書いている側としては能のない文章をそれこそ「書経」のごとく続けている気分になってはなはだ面白くないのだ。劇場映画の場合は音楽と対応するシーンが限られるからまだ救われるが、TV作品の場合、定番曲には自ずと膨大な使用例が引用されることとなり、下手をすると、私はこのCDを構成するためにこれだけの調査を行いました凄いでしょう、というような気分が行間から滲み出てしまうようなデータ原稿に陥ることになる。
 そういう自省を込めて、サントラを聴きながら読んで楽しい曲目紹介を、と念頭に置きつつ書いているつもりではあるのだが、なかなか会心の文章は組み立てられないでいるのが現状だ。使用シーン紹介だけに終始せず、専門的な音楽用語で煙に巻くことをせず、作品自体に重きを置きながら、音楽の特徴を紹介していくことは可能なはず。
 だからこそ、杉田氏には「敢えて外し」なんてことは書かず、「響鬼」の流儀にぴったりの、これまでにない楽曲解説の有り様を示してほしかった、と思うのだ。
 

●第7回へ続く

(05.07.15)

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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