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REVIEW
CD NAVIGATION[早川優]

第12回
「ULTRAMAN オリジナルサウンドトラック」
B’zの松本孝弘がミュージック・スーパーバイザーを務めた話題のサウンドトラック盤、待望の発売なる!!
〜壮大で感動的なあのシーンが蘇る!〜

 映画「ULTRAMAN」サントラが、劇場公開から半年の時間を経てついにリリースされた。これはもう、一ファンとして心から嬉しい出来事だ。
 2004年の12月に公開された「ULTRAMAN」は、脈々と作り続けられてきた一連のウルトラマン・シリーズにあって、初めてと言えるほど「飛ぶ」ことに徹底的に拘った作品だった。主人公は航空自衛隊のパイロットという設定で、劇中ではウルトラマンが空を飛ぶヒーローであることの必然性を映像によって明確に描いて見せた。その飛行シーンの臨場感を表現すべく、作品にフライングシーケンスディテクターの役職名で板野一郎が参加したこともファンの話題を集めた。
 音楽は、本格的なロック・サウンドを望んだスタッフの人選で、B’zの松本孝弘がミュージック・スーパーバイザーとして参画。さらにプロデューサーとして幅広く活躍する田靡秀樹の統括の下、複数の作曲家が関わることで多面的な色合いのサウンドが生み出された。その響きは映画公開と同時に話題になったが、サントラの具体的アナウンスがなかったことにファンは大いに気を揉んだのだ。最近は新作のアニメといっても音楽集がリリースされずに終わることも珍しくないが、なにせウルトラマンの劇場版である。公開と同時期にサントラCDが店頭に並ばないことは完全に予想外だった。
 そのサントラがついにリリースされた。筆者自身、これほど発売を心待ちにした邦画サントラも久方ぶりだ。CDのライナーに寄せられた円谷ミュージックの音楽プロデューサー・玉川静の言に因れば、この発売スケジュールは当初から意図されたものだったという。
 さて、待望久しいサントラは、映画から想像していた以上の音楽的快感を与えてくれる。まずは本作の音楽のコアとなる楽曲として、松本孝弘は「Theme from ULTRAMAN」と、自らのソロ・プロジェクトであるTMGによる主題歌「NEVER GOOD-BYE」を提供している。
 映画のテーマに沿った主題歌も素晴らしい出来映えだが、個人的に喝采を叫びたいのは「Theme from ULTRAMAN」。これは、オリジナルの「ウルトラマン」の主題歌のアレンジを現代的に巧みにブラッシュアップした趣向になっている。単なるノスタルジーやオマージュではなく、原曲をリスペクトした上でまったく別個の優れた楽曲として完成させている。「ウルトラマンの歌」のアレンジがここまで新鮮に響くものかと正直驚いたし、松本の計らいは実に粋だ。楽曲は「ウルトラマン」の主題歌を想起させる律動感に乗って、松本ならではの多元的な音色のギターが縦横無尽に響き渡る。THAT'S TAK MATSUMOTO印が刻印されたギター・インスト・ナンバーながら、しっかりとウルトラ感を感じさせる音楽になっているのは面白い。思えば、ここ近年のウルトラ音楽にしても、『ネクサス』の川井憲次、『マックス』の■島邦明(■=くさかんむりに配)ともに、それぞれ両氏の通常の作風とは多少色合いの異なった「ウルトラ」な響きの音楽を提供している。
 「Theme from ULTRAMAN」は、サントリーホールで開催された松本孝弘と東京都交響楽団によるライブをスタジオ録音で再現した好アルバム「House of Strings」(BMCS8001)に、新録音のオーケストラ・バージョンとして収録されていたが、劇中で別所哲也演ずる主人公・真木舜一とウルトラマンが邂逅する重要なシーンで使用されたサントラ・テイクは、これが初の商品化である。劇中では、このテーマが映画に登場するウルトラマン「ザ・ネクスト」の主題として、事あるごとに変形されて演奏される。
 他の作曲家の筆になるスコアについても触れておくと、池田大介や林良は重厚なオーケストラの響きを用いて、ドラマのスケール感の描出に一役買っていた。鎌田真吾はスネアやパーカッションを前面に押し出した律動的な音楽で、未知なる侵略に晒された地球の危機感を表現する。
 特筆すべきは小澤正澄の仕事。彼のペンによる雄大な曲想の真木のテーマ曲や憧れの主題は、「Theme from ULTRAMAN」に次いでスコア中の重要な役割を果たしている。
 繰り返しになるが、待望のサントラがDVDの発売とともに日の目を見たことはファンとして嬉しい限り。心残りは映画本編のラストで告知された「ULTRAMAN 2 レクイエム」の企画のその後が聞こえてこないこと、であろうか。(文中敬称略)
(執筆/早川 優)

■DATA
ULTRAMAN オリジナルサウンドトラック
全26トラック 収録時間:56分39秒
VERMILLION RECORDS BMCV8015
2005年7月20日発売 定価2310円(税込)
[Amazon]

■執筆者からの一言
 あぁぁ、ようやく愛・地球博へ行ってきましたよ。大阪万博で興味のあったパビリオンをほとんど見ることのできなかった者としては、久々に到来したリベンジの機会……だったのだが、春先から旅行予定はことごとく潰れ、結局来場したのは、期間中最大の28万1441人の入場者を数えて初の入場制限まで行われた9月18日って一体。裏技として瀬戸会場から入ったものの、そこから二進も三進もいかなくなり、ペットボトルを買うだけで30分も並ぶ始末。
 それでも、参加各国の万国旗がはためき、巨大な建造物の間を大勢の見物客が行き交う会場の熱気溢れる雰囲気を大いに満喫した、と日記には書いておこう(古すぎ!)。
 そんな中、最大の心残りが、万博名物・三菱未来館の売店で大島ミチルさんの音楽を収録したCD(※註)が売り切れで買えなかったことなのは内緒である。我ながら自分のサントラ・ファンとしての業の深さに苦笑。

※註
 大島さんは今回の地球博の「三菱未来館@earthもしも月がなかったら」の、メインショー映像の音楽担当。CDはイメージ・アルバム的な作りで、大島さんのスコアは1曲のみ収録なんですけどねー、でも欲しかった! 売店のお兄ちゃんには、「こんな時代ですから、ネットででも探してください」って言われちゃうし!!
 思えば、大阪万博と沖縄海洋博の三菱未来館で音楽を務めたのは伊福部昭さんで、大島さんとは「ゴジラ」つながり。ちなみに、初代の三菱未来館の展示プロデューサー・板野義光氏は、この実績が認められて怪獣映画に環境問題テーマを持ち込んだ「ゴジラ対ヘドラ」を監督することになり、地球環境というキーワードで三菱未来館の歴史は円環を描くことに。
 

●第13回へ続く

(05.10.03)

 
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編集・著作:スタジオ雄  協力: スタイル
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