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第38回
「トップをねらえ2!Original Soundtrack」
〜トップワールドを彩る壮大なサウンドを体感せよ!〜
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昨年秋の好興行「合体劇場版」も記憶に新しい『トップをねらえ2!』。今回は、アルバムのリリース自体からは少々時間が経っているが、そのサントラ・アルバムを紹介したい。
『トップをねらえ! Gunbaster』は、『ドテラマン』(1986)や『エスパー魔美』(1987-89)等の作品で映像音楽の作曲家として歩み始めていた田中公平にとって、コアなファン層に存在をアピールするきっかけとなった作品。それから17年余りの時間を経て、GAINAXの創立20周年を記念した『トップをねらえ2!』に登板することになった。CDのライナー中のインタビューによれば、作曲依頼を受けた田中は他のスタッフが世代交代している中「また、私だけ入っていいの?」と感じたそうだ。一方、やはりライナー掲載のインタビューで監督の鶴巻和哉は、「監督を引き受けるにあたって、まずは田中公平さんの音楽を使いたいというのがありました」と明言する。20年近い時間を経て、再び『トップをねらえ!』という作品を世に送り出すにあたって、続編としての正統性をいの一番に表わすものが田中の音楽だったわけだ。
最初の『トップをねらえ!』以降、多くのアニメーション音楽の仕事を経て、田中の音楽も大きく進化を遂げてきた。本作では、旧作を知るファンが納得する『トップ』らしいサウンドを目指す意味合いもあって、明確なメロディ・ラインをもつオーソドックスなアニメーション音楽に回帰した感がある。
全6話の物語の必要に応じて録音された音楽は、バラエティに富んだラインナップ。ノノやラルクら登場人物のためのテーマから、トップレスの活躍や宇宙怪獣の出現等を表現した状況音楽まで、作品を一度観れば必ず耳に馴染む楽曲が入れ替わり立ち替わり現れて、74分56秒を一挙に聴かせてくれる。
本作のメインテーマとして位置づけられているのは、ヒロイン・ノノのテーマ「ノノ」。第1話でラルクをノノが追うシーン他で使われた曲で、ピアノとギターによる軽快なリズムをバックに、ストリングスが夢見る少女の無敵ぶりを流麗に綴っていく。
やはり第1話で生身のノノが宇宙空間でまさかのイナズマキックを放つシーンに使われる「トップレス」は、本盤の白眉となる楽曲のひとつ。エレキギターを従えたオーケストラが、ドライブ感たっぷりにヒロイックなメロディをユニゾンしていく様は、まさに田中公平一流の燃え系スコアの真骨頂で、音楽だけ聴いていてもワクワクすること間違いなし。
そうした新楽曲群の中にあって、旧作のモティーフが受け継がれた「バスターマシン・マーチ」は、『トップ』ファン・田中音楽のファンにとって心の琴線に触れる楽曲で、「♪ダンドン、ダンドン」とティンパニーのイントロが鳴り始める瞬間から、鳥肌が立つことを禁じえないはず。
筆者的に感激したのは、第1話冒頭シーンのカット割に合わせて寸分違わぬ正確なフィルム・スコアリングが施された「レ・プレ」。田中の映画音楽作曲家としての資質の高さを物語る音楽として、是非、注目してほしいナンバーだ。
繰り返しになるが、新旧『トップ』の世界観をひとつにした、鮮やかな幕切れの音楽「立つ鳥跡を濁さず」まで、至福の1時間15分はまさにあっという間だ。
アルバムには、『トップ2!』の作品内で使用された音楽は、CDドラマにのみ使用された楽曲を含めて、すべて収められている。
OPとEDの主題歌はフルサイズで収録。ライナーには前述の田中公平、鶴巻監督のインタビューの他、楽曲の使用シーンを記載したBGMリストが完備されているのは、マニア的にうれしい配慮だ。
『トップをねらえ』のファン層にはすでに愛聴盤になっていると思われるが、作品を未見の方にも大いに勧めたい傑作である。
(文中敬称略。執筆/早川優)
■DATA
「トップをねらえ2!Original Soundtrack」
全トラック 収録時間: 74分56秒
ビクター
VICL-61926
2006年9月6日発売 定価3045円(税込)
[Amazon]
■執筆者から一言
昨年物故したアニメにも縁のある作曲家・伊福部昭と宮川泰を偲ぶ演奏会が、相次いで開催される。
「ゴジラ」等の怪獣映画の音楽も演奏される「伊福部昭音楽祭」は3月4日(日)、15時からサントリーホールにて。高畑勲監督らをゲストに『わんぱく王子の大蛇退治』等を材として伊福部昭の映画音楽を語るトーク・コーナー「映画人、伊福部昭を語る」もある他、今月末に公開される『鉄人28号 白昼の残月』の重要なシークエンスで使用されている「シンフォニア・タプカーラ」も演奏曲目に含まれている。
ささきいさおが『宇宙戦艦ヤマト』の主題歌を歌う宮川泰メモリアルコンサートが、氏とも関係の深いNHKホールにて3月11日(日)16時より。梓みちよ、伊東ゆかり、ジュディ・オングらのオールスターが宮川メロディを歌う。
興味のある方は、是非、足を運ばれてみてはいかがだろうか。
P.S.
鶴巻監督が『トップ2!』ライナーのインタビュー中で、「僕自身、サントラのCDを買わない人なんです」と語っていたのが妙に気になってしまった(それでも『トップ』は持っているとの由)。日本のサントラ業界の片隅に席を置く身としては、監督に食指を伸ばしていただけるようなサントラを1枚でも多くリリースしなければ、と背筋を伸ばした次第。
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