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REVIEW
CD NAVIGATION[早川優]

第18回
「20th Anniversary とんがり帽子のメモル SONG & MUSIC コレクション」
DVD BOX発売に合わせてリリース! 挿入歌と音楽を2枚のCDにたっぷり収録
〜ちいさな天使たちの音楽会 リルル村からやさしい気持ちがとどきます〜

 コロムビアが誇るアニメ・特撮サントラ・カタログを廉価で再リリースする好企画ANIMEX1200シリーズは、好評の内にタイトル数を増やしている。その嬉しい副産物と言えるのが、シリーズ中で高セールスを記録した『スペースコブラ』等のタイトルをデラックス仕様にした新規構成盤の発売である。DVD BOXの発売と足並みを揃えてお目見えした『メモル』も、この流れの中で実現したCDだ。
 『メモル』は、1980年代の東映アニメーションが完全オリジナルで生み出した傑作メルヘン・シリーズ。若手とベテラン・スタッフが織り成す高品質な作品世界は、多くのファンの心を今もって捕らえて離さない。
 その『メモル』において音楽は重要な要素だった。メルヘン・ファンタジー作品では、作品の世界観をスムーズに視聴者へ伝える役割を果たす。音楽が醸し出す空気感や肌触りが作画や美術の意匠と一致した時、その作品世界は確固たる存在として息遣いし始める。『メモル』では青木望がその任を鮮やかに務めていたわけだ。『銀河鉄道999』『北斗の拳』など、アニメ音楽では東映アニメーション作品に優れた仕事を残す青木は、アレンジャーとして一時代を築いた人物。思えばコロムビアの高品質なアニメ・サウンドトラックは、矢野立美や若草恵ら、アレンジャー系の人材によって支えられていたように思える。
 本作品においては、青木の編曲家ならではの繊細な音遣いと、人柄の反映された優しさに溢れるメロディ・ラインとが実によくマッチした。青木は他の代表作同様に主題歌「とんがり帽子のメモル」「優しい友達」の編曲も手がけ、劇中音楽との地続き感を確保したほか、名曲としてファンに名高い挿入歌「金の星ふります」の作曲を手がけている。
 今回の2枚組CDの構成と解説を担当したのはWEBサイト「劇伴倶楽部」主宰の腹巻猫。未収録曲を多く含む代表的な背景音楽のコレクションを核に、再発が待望されていた「ヒット曲集」全曲と、主要歌曲のカラオケまで押さえた全方位的構成である。TVサイズの主題歌も完璧に押さえられ、これ1セットで『メモル』の音楽世界を一望することができる。貪欲なファンの願いとしては、本CDが成功を収めた暁には是非とも、今回は未発見という挿入歌のインスト曲を中心に未収録楽曲で組んだ追補盤のリリースを期待したいところ。雑食系のアニメ音楽ファンである筆者でさえ、それを強く願うのだから、『メモル』愛好家諸氏の思いの大きさは想像するに余りある。
 本CDに冠されている「20th Anniversary」の文字。まるで昨日のことのような感触の『メモル』放映から20年も経ってしまったという事実に、改めて衝撃を受ける今日この頃ではある。ともあれ、『メモル』の世界を愛してやまない熱心なファンにとって、放映20周年を機にリリースされたDVD BOXとこのCDは、2005年の最高のクリスマス・プレゼントになるだろう。
(執筆/早川 優)

■DATA
「20th Anniversary とんがり帽子のメモル SONG & MUSIC コレクション」
DISC1
全24トラック 収録時間:78分09秒
DISC2
全23トラック 収録時間:76分25秒
コロムビアミュージックエンタテインメントCOCX33339→40
2005年10月19日発売 定価3990円(税込)
[Amazon]

■執筆者から一言
 先行ロードショーが始まった「キングコング」、評判いいっすね! 3時間があっという間、CGコングには感情移入されられっぱなしで、エンド・クレジットが流れる最中には、そこかしこでご婦人方の鼻をすする音が聞こえるとか。
 個人的に残念なのは、当初、音楽を担当していたハワード・ショアが完成直前でクビになってしまったこと。急遽後釜を務めることとなったジェームズ・ニュートン・ハワードは、もちろんそつない仕事ぶりを聴かせてくれているだろうことは重々承知しつつ、ショアが巨大猿を巡る冒険譚をどんな音楽で彩るかに興味があった。
 ここは、時を同じくしてリリースされたピーター・ジャクソン監督とハワード・ショアの大成功作「ロード・オブ・ザ・リング」第1作の完全版音楽集(CD3枚、音楽メイキング・オブのDVD1枚!!)に身を委ね、ショアの失われたコング・ミュージックに心を馳せてみたい。
 それにしても、この完全版音楽集のボリューム感!! この後、「二つの塔」と「王の帰還」も控えていることを考えるとクラクラくる。前回の『エウレカセブン』の紹介でも書いたが、こういった豪華仕様にすることが、今の世にサントラCDが生き残る一つの道筋であることだけは確かである。「ロード・オブ・ザ・リング」の完全版[Amazon]は飛びっきりのお買い得価格なので、関心のある方は是非!

追記(05.12.28)
 上記「ロード・オブ・ザ・リング」第1作の完全版音楽集の記事内にて、DVDの内容を音楽のメイキングものとする記述をしたが、これは筆者の完全な勘違い。実際はCDにステレオ収録されている3時間分の楽曲の、映画用5.1サラウンド・ミックスを収録したDVDオーディオだった。現在のドルビーサラウンド音響の映画音楽をアイテム化する上で、これ以上はない配慮といえる。やはり、これは究極のコレクションだ。今現在、最初に紹介したときに比べて価格が変動しているが、買いであることに間違いはない。
 ちなみに、音楽のメイキング映像に関しては、映画本編の長尺盤仕様のDVD「スペシャル・エクステンデッド・エディション」に収録されているので念のため。
 

●第19回へ続く

(05.12.19)

 
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