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REVIEW

CD NAVIGATION[早川優]

第28回
「練馬大根ブラザーズ リミックス(1)」
いよいよ登場の1stアルバムは、ゴージャスなリミックス盤!
〜前人未踏? 劇中のミュージカルナンバーをリミックスしたサントラです〜


 本格的なミュージカル・シーンを見せ場にしたTVアニメ・シリーズとして本作が登場したことは、間違いなく2006年のアニメ・シーンにおけるひとつの事件だった。表現のとしてのアニメとミュージカルの相性がいいことは、ディズニーの諸作品を挙げるまでもなくファン・制作側ともに承知のこと。だが、劇場用の映画にならばいざ知らず、TVシリーズでの試みとなると、かつての『ジャングル大帝』や『ワンサくん』など、少数の例を数えるにとどまっている。何としても歌を用意し、それに合わせた画を作るということは、現在のテレビ・アニメの大抵の現場では手に余る難事なのだ。その大変さは、基本的に音楽は毎回新録りする海外のTVアニメでも、ミュージカル回を作ろうとした場合、1クールに1話がせいぜいというところからもうかがえるだろう。
 今回の『おろしたてミュージカル 練馬大根ブラザーズ』は1クールという短期シリーズながら、堂々の全編の見せ場をミュージカルで揃えた、世界的にも画期的な作品だったのだ。さらに劇場政治から韓流まで近年の世相をパロディの俎上に上げた本作の趣向は、音楽劇のスタイルを採ることで、よりパワフルに熱烈に視聴者へ届いたともいえるだろう。
 さて、ミュージカル作品ということで、放映当初からファンに待望されていたのが音楽集アルバム。毎回、ストーリーの展開に併せて挿入歌が作られているとあって、サントラがどういった形で発売されるかは筆者も興味津々だった。
 果たして、いよいよリリースなった第1弾アルバムは「リミックス」を謳ったソング・コレクション。この「リミックス」という言葉からは、原曲を自由にいじり倒すような印象を受けるが、実際はさにあらず。基本的に各曲のボーカル・トラックはそのままに、台詞のミキシング、数話分の楽曲のメドレー化、バッキング・トラックのアップグレードなどがアルバム化にあたっての主要メニューであり、原曲の雰囲気や構成を大切にしつつ、音楽商品としてゴージャスに仕上げているのだ。これは最初のアルバムとしては正しいチョイスだろう。番組で流れたままの形で挿入歌を楽しみたければ、今やDVDがあるわけだから。この後には「サントラ」のリリースも予定されており、こちらがどのような趣向でまとめられるかにも、大いに期待させられるのだが。
 リミックスを手がけたのは、『ケロロ軍曹』や「TAKESHIS'」のサウンドトラックにも参加する2人組ユニットのTOMISIRO。映像音楽の現場を多数踏んでいる2人だけに、アルバムとしてのまとまりと聴きやすさはきちんと押さえつつ、原曲への敬意を感じさせる仕事ぶりには好感がもてる。
 アルバムは第6話までのエピソードから練馬大根ブラザーズが歌ったナンバーを中心に選曲、OP2種とED1種の3曲のリミックスをボーナスに加えた全10曲構成。番組のファンであればもちろん、作品は未見という音楽好きにも手に取っていただければ、松崎しげるが歌・芝居双方で芸達者ぶりを発揮したヒデキ役に牽引され、森久保祥太郎(イチロー)、松本彩乃(マコ)が奮闘するミュージカル作品ならではの音の楽しみを満喫できるだろう。
(文中敬称略。執筆/早川優)

■DATA
「練馬大根ブラザーズ リミックス(1)」※(1)は○の中に1
全10トラック 収録時間:44分35秒
Aniplex Inc. SVWC7346
2006年5月3日発売 定価3150円(税込)
[Amazon]

■執筆者から一言
 ワタナベシンイチ監督とは同学年ということもあって、第10話「俺のバッドをスリスリらー♪」のマイケル・ネタなど、音楽パロディが世代的にドンピシャでありました。
 さて、今回の「リミックス(1)」、初回特典としてマル秘プレゼント入り特製お札がついてくるのだが、その収納場所がCDのジュエル・ケース・トレイの蝶番側のスペースというのが気に入った。透明トレイならではの技で、ここにこんな使い方があったとは!! CDケースの専門用語に意味不明な向きは、初回限定盤の現物を確保して確認されたし。
 

●第29回へ続く

(06.05.25)

 
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